「人々の共感を安易に得るというのは危険なことです」
ソーシャルメディアとの向き合い方について
―――そんなスージーを演じたカーシー・クレモンズさんは様々な役を演じています。私は『Sweetheart』(2019年:日本未公開)の、無人島で野性に目覚め凶暴性を表す役が好きなのですが、今回はコメディリリーフに扮する彼女を演出してみていかがでしたか?
「カーシーは天才だしユニークな俳優です。カメラを向ければ、ガッツリと存在感を感じさせる魅力があります。感情表現も俊敏に切り替えてくれるし、演技がブレない。私も彼女の演技が好きで、当然『Sweetheart』も観ています。『Sweetheart』は、殆どカーシーの1人芝居といっていいほどの内容なのに、最後まで観る者を惹きつけているでしょう? 本当に素晴らしい俳優です。
実際、一緒に仕事をしてみると思った通りの俳優でした。要求された役柄に対しての徹底的な下準備、それに見合った臨機応変な現場での対応、私たちへの絶対的な信頼。和気藹々としたオフの直後でもヘヴィな芝居がスッと苦も無くできる。真のプロフェッショナルです。編集段階では使えるカットばかりで困りました」
―――ジェシーを演じたアレックス・ウルフさんはどうでしたか?彼も役作りは強烈だと伺っています。
「彼のコメディックな演技を見たことがなかったのだけれど、期待以上の才能でした。ナイーブかつノリの軽いセレブを見事に演じてくれましたね。演技のタイム感がいいんですよ。と言うのも、彼はジェシーというキャラクターを底の底まですくい取って演じてくれたんです。
実際に「Jesse Wilcox Loves Peace」というインスタグラムアカウントも作成してくれました。いわばメソッド系の俳優なんですよね。メソッド系俳優の演出は難しいといわれますが、アレックスはこちらの要求に応えてくれました。人間的にも柔らかく、カメラが回っていようが回っていまいがカーシーと仲良くしていました。お互い準備万端な俳優ですから、彼らの相乗効果のおかげで映画がより良くなったと思います」
―――最後にソーシャルメディアについて何か意見はありますか?
「人々の共感を安易に得るというのは危険なことです。ジェシーはインスタセレブ、つまるところインフルエンサーであり、人々から共感を得ていますが、常に“完璧”であることを要求される。これは自己肯定感に悪影響を及ぼしますし、時には神経症になることもあります。翻して、インフルエンサーの言っていることを真に受けすぎても自分を見失ってしまう。ソーシャルメディアは人々を繋げる便利なツールですが、ほどほどに…」
カーグマン監督は『#スージー・サーチ』で、トゥルークライムポッドキャストの流行と、その個人の行動に与える影響を描いている。
さらに、効果的なフリーズフレームやクローズアップ、スプリットショットなどのビジュアル手法を用いて緊張感を高め、観客の心をワシ掴みにしてくる。前半と後半の極端なトーンの違いも楽しく、是非劇場で観てほしい作品だ。
(取材・文:ナマニク)
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