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「このくらいの優しさがないと世の中に生きる価値なんてない」映画『ニューノーマル』チョン・ボムシク監督、単独インタビュー

text by ナマニク

韓国を代表する女優、チェ・ジウの7年ぶりとなるスクリーン復帰作『ニューノーマル』が、新宿ピカデリー他にて公開中だ。メガホンをとった『コンジアム』(2018)のチョン・ボムシク監督へインタビューをお届け。インスパイアを受けた映画から細部の演出に至るまで、たっぷりお話を伺った。(取材・文:ナマニク)

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【著者プロフィール:氏家譲寿(ナマニク)】

 文筆家。映画評論家。作曲家。日本未公開映画墓掘人。著書『映画と残酷』。『心霊パンデミック』サウンドトラック共作。ホラー映画評論ZINE「Filthy」発行人。コッソリと外国の自主制作映画に出演する隠れ役者。

ジャンルを越境する異色のオムニバス

©2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

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 “ニューノーマル”は、パンデミック以降に浸透した言葉だ。しかし、パンデミック前後関係なく社会の急速な変化は加速する一方だ。移動や通信手段はもとより、人間の思考も凄まじい速度で変わり続けている。技術にあわせて生活や行動様式がより便利になっていく一方、弊害もある。

 その変化に自分がどこまで追従できているのか? 取り残されているのではないだろうか? そんな不安や孤独を感じる人々も多いのだ。『ニューノーマル』は、そんな不安に苛まれ“病んだ”人々をオムニバス形式で描いた作品だ。

 オムニバス映画というと散文的な作品になりがちだが、本作は各エピソードを非線形型(時間軸の変更)で並べ、絡み合わせている。この絡み合いが実に緻密。迷路のような展開で絶望と希望が入り交じった新しい“常態”をトリッキーに描いている。

 見事な語り口で“ニューノーマル”を描いたのは、『コンジアム』のチョン・ボムシク。『コンジアム』では実在する廃精神病院を舞台に、配信者達の恐怖の一夜をPoV形式で描き観客を絶叫させた。だが、本作ではガラリと作風を変え、サスペンスからブラックユーモア、そしてホラーを横断するジャンルレスな作品となっている。しかも、各エピソードには往年の名作のタイトルを冠し、それぞれがオマージュを捧げる気の利いた作りになっている。

『M』、『殺しのドレス』、『いま、会いに行きます』、『血を吸うカメラ』、『ライフ・アズ・ア・ドッグ』となんでもありの面白いチョイスだ。『コンジアム』からどんな変化があったのか? チョン・ボムシク監督に話を伺った。

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