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観客の想像力を刺激する音楽の魅力

主演を務めたビョーク
主演を務めたビョークGetty Images

本作の音楽の軸となるのは、もちろんミュージカルシーンでビョークが披露する歌である。

本作に登場するミュージカルシーンは計7つ。列車の軋む音や機械の作動音など、周囲の音がきっかけとなり、現実とシームレスに妄想シーンへと突入していく。

ここで注目したいのは、物語ラストにセルマが絞首台で歌う「最後から2番目の歌」。この場面のみ、「現実パート」と「妄想パート」の境界が崩れ、「現実パート」のセルマが歌い始めるのである。そして事が終わり、絞首台下のカーテンが閉められた後、画面に下記のようなテロップが表示され、ゆっくりとカメラが上昇していく。

ーこれは最後の歌じゃない
分かるでしょう?
私たちがそうさせない限り
最後の歌にはならないの

ここで思い出してほしい。物語の序盤、セルマがビルにミュージカル映画について語っていた以下のセリフを。

ー最後から2曲目が終わったら、映画館を出てしまうの。そしたら映画は永遠に続くでしょう?

これらの内容から読み取れるのは、「観客が最後と思わない限り、映画は永遠に続く」ということだろう。これは、エンディング曲「New World」が、本作冒頭で流れたインストゥルメンタル曲「Ouverture(序曲)」のソングバージョンであることからも伺える。

では、セルマの死の後に、一体どのような物語が続くのか。それはおそらく、セルマが命を懸けて守ろうとした一人息子・ジーンの人生だろう。セルマの「最後から2番目の歌」では、次のような一節が登場する。

―愛するジーン、あなたがそばにいる。だからもう、何も怖くない。忘れていたわ。私はひとりぼっちじゃない。これは最後の歌ではないわ。

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