前作よりも派手さを増した演出
『グラディエーターII』には、前作を思い起こさせる描写が多々ある。冒頭から最後まで、主人公ルシアス(ポール・メスカル)の手の所作は、1作目でマキシマスが作物やコロッセオの砂を触っていた手と重なる。妻を殺した将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)への復讐を決意したあと、奴隷商人に買われコロッセオで決闘するまでの過程も、前作を彷彿とさせる。
また、ハンス・ジマーは今作のスコアを書いていないが、ジマーが主宰するリモート・コントロール・プロダクションのハリー・グレッグソン=ウィリアムズが音楽を引き継いでいる。「Now We Are Free」も引き続き使用された。
こうして前作を強く踏襲しているものの、演出はさらに派手になっている。
ガレー船による砦の攻略、何匹もの猿との戦闘、サイに乗った戦士。度肝を抜かれたのが、コロッセオに水を張った上での模擬海戦だ。水の中にはサメも放たれており、危機一髪の状況で2隻の船がぶつかり合う。
スケールを増した演出の数々に、まずはこの続編が作られた意義を見出せるだろう。
とはいえ、前作同様、『グラディエーターII』も、ただカタルシスを感じるだけのスペクタクルな娯楽大作にはなっていない。
『グラディエーター』では、無慈悲な暴力を娯楽として消費し歓声を上げていたローマの人々が、マキシマスと皇帝との闘いの果てに、最後には黙ってしまうカットが挟まれた。ローマ市民は、映画館の観客の似姿でもあるだろう。