かっこよく思わせることを拒否するような演出と音の使い方
今作は、スクリーンに映る戦争や決闘にただ興奮することを許さず、それらを冷静に見つめさせようとする演出をさらに際立たせている。
海から砦を攻めた北アフリカでの派手な戦闘では、ブーンという重低音が鳴り続け、圧迫されているようにすら感じた。映画館の環境や個人の感覚の違いもあるかもしれないが、特に前半はメロディの印象が薄く、とにかく圧迫感のある低音が耳に残る。ペドロ・パスカル演じる帝国の将軍、アカシウスの人物造形自体がそうだが、戦争の勝利者を勇猛かつ誇り高く見せることを否定し、それをかっこよく思わせることを拒否するような演出、音の使い方に思えた。
また、『グラディエーターII』では、皇帝による圧政が激化しており、ローマ内での貧富の格差を示すショットが随所に挟まれるのも特徴だ。コロッセオで暴力を娯楽として楽しむ人々がいる一方で、そのすぐ外には貧困に苦しむ人たちが映し出される。