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デンゼル・ワシントンの忘れがたい名演技

©2024 PARAMOUNT PICTURES
©2024 PARAMOUNT PICTURES

 前作とさらに大きく異なるのは、復讐と決闘を強調しながらも、赦す場面が訪れるところだ。

 復讐を止め、相手を赦し、戦闘を中断する。門を隔て向かい合う2つの陣営の間に立つルシアスは非常に印象的だ。見た目は筋骨隆々だが、どこか柔和でマッチョさを感じさせないポール・メスカルは、こうした描写に説得力を持たせているように思える。前作のラッセル・クロウ=マキシマスの圧倒的な存在感には叶わないかもしれないが、ルシアスは、また違った形で、ローマの共和制の夢を体現する人物として映る。

 このポール・メスカル=ルシアスと対になるのが、デンゼル・ワシントン演じるマクリヌスだ。奴隷から這い上がって大商人となったマクリヌスは、言葉巧みに人を操り帝国を乗っ取ろうとする。とある事情により、共和制の理念を含めたローマ全体への復讐者としても捉えられる。

 ここでのデンゼルの演技は素晴らしい。トニー・スコット監督作での仕事人的なデンゼルの笑顔や『イコライザー』シリーズでの冷静な目とも違う。豪快に笑い、時に眼光鋭く、捉えどころがない。強い意志を持つ徹底した復讐者でありながら、艶やかで漂うような、本作ならではの魅力に惹きつけられる。権力の象徴である玉座を、撫でるように触るデンゼルを捉えたショットは忘れられない。

 ルシアスとマクリヌスの行く末や、前述したローマ市民の格差を見ると、24年という時間と共に、対立がさらに激化した現実社会をどうしても読み取ってしまう。続編を通じて、この世界が抱える問題を思い浮かべずにはいられないだろう。

(文・島晃一)

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