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ニューヨークの街の喧騒と名曲「セプテンバー」

ロボット・ドリームズ
©2023 Arcadia Motion Pictures S.L., LokizFilms A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL

 本作の無声の世界に彩りを添えているのが、多彩な音楽の数々だ。ロック、ジャズ、ラテンなど、多ジャンルの音楽が随所に溢れ、街の喧騒や公園の賑わい、地下鉄でタコが演奏するドラミングなど、ニューヨークの街並みに溶け込むリズムが心地よい。

 特に、本作のテーマ曲として繰り返し流れるアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」は、シーンごとに異なる感情を引き出す不思議な力を持っている。

 孤独だったドッグがロボットとのかけがえのない日々を楽しむ際に流れる「セプテンバー」は、晴れ渡る青空のように明るく爽やかな感情を呼び起こし、一方で、錆びついて動けなくなったロボットが海岸で口ずさむ「セプテンバー」には、胸を締め付けられるような切ない感情が宿っている。

 極め付きは、ロボットがドッグに自分の存在を知らせるために流す「セプテンバー」だ。このシーンには、喜び、切なさ、そして希望が入り混じった複雑な感情を一気に湧き上がらせ、観客を泣き笑いさせる力がある。

 その音楽に合わせて、ドッグとロボットが出会った頃のように無邪気に踊る姿を見た瞬間、筆者の涙腺は完全に崩壊してしまった。彼らが身を任せる音楽が「もう元には戻らないけれど、決して色あせることのない素敵な思い出を胸に抱きつつ、生きていこう」というドッグとロボットの“新たなスタートを祝福する曲”のように聞こえ、感情を揺さぶられたのだ。

 このラストの「セプテンバー」を聞きながら、私は、思わず2人を抱きしめたくなった。ドッグとロボットの友情を描く深みのある物語に、泣いたり、笑ったりする本作は、私たちの心にいつまでも残り続けるだろう。

(文・シモ)

【作品概要】

監督・脚本:パブロ・ベルヘル
製作:イボン・コルメンツァーナ、イグナシ・エスタペ、サンドラ・タピア、パブロ・ベル
ヘル、アンヘル・デュランデス
共同製作:ジェローム・ビダル、シルヴィ・ピアラ、ブノワ・ケノン
アートディレクター:ホセ・ルイス・アグレダ
アニメーション監督:ブノワ・フルーモンプロダクションマネージャーフリアン・ララウリ
キャラクターデザイン:ダニエル・フェルナンデス
編集:フェルナンド・フランコ
音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ
サウンドデザイナー:ファビオラ・オルド
ヨミュージックエディター:原見夕子
オーディオミキサー:スティーブン・グーティ
原作:サラ・バロン
公式サイト

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