目まぐるしい展開と重厚な演技
本作は152分という比較的、長尺の作品だ。しかしながら、それを感じさせないほどに、目まぐるしい展開で、冗長さは微塵も感じられない。
それは、パルム・ドールを手にしたジュスティーヌ・トリエ監督の手腕と、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされているザンドラ・ヒュラーの演技によるものだろう。
加えて、盲目でありながら気丈な少年・ダニエルを演じたミロ・マシャド・グラネールの好演と、カンヌ国際映画祭で優秀な演技を披露した犬に贈られる賞「パルム・ドッグ賞」を受賞した盲導犬のスヌープの存在感も見逃せないポイントだ。
本作のストーリーは、サンドラが有罪か無罪かというシンプルな見方のみならず、同時に妻は夫を愛していたのかどうか、そして、それを証明することは可能なのかという問いを突き付けている部分もあり、夫婦愛や夫婦関係、加えて親子関係の難しさが、痛いほど伝わってくる作品だ。
(文・寺島武志)
【作品情報】
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
製作:マリー=アンジュ・ルシアーニ、ダビド・ティオン
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、サミュエル・セイス、ジェニー・ベス、カミーユ・ラザフォード
配給:ギャガ
製作会社:Les Films Pelléas、Les Films de Pierre
2023年/フランス/フランス語・英語・ドイツ語/G/152分/カラー/ビスタ/原題:Anatomie d’une chute
(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE
https://gaga.ne.jp/anatomy/
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