ジェイソン・モモアの圧倒的な存在感と
ジェームズ・ワン監督の安定感
それでも今作でワクワクすることができるのは、なんといってもジェイソン・モモアのバカ陽気な雰囲気のおかげである。
モモアは『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)でも、『ワイルドスピード ファイヤーブースト』(2023)の悪役でも、ほとんど変わらないような演技を披露しているが、あのデカい体で暴れまわり、毛量多めなワイルドフェイスでニヤリとされたら細かいことはどうでも良くなってしまう。
そのぶん、オームを演じたパトリック・ウィルソンの影が薄くなり、弟の設定なのに年上にしか見えない辛気臭さが漂う。このふたりならではの新鮮なケミストリーが生まれなかったのが惜しい。
とはいえ、ジェームズ・ワン監督の安定感は抜群。ノンストレスな語り口に、斬新なアングルやスピーディなフィジカルアクションをぶっ込んでくるので、ギリギリで飽きさせない。
方向性がどんどん変わっていく現場をコントロールするのは大変だったと思われるが、ソツなくまとめた手腕はさすが。主人公が急死してしまうという不測の事態を乗り越えて『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)を完成させ、シリーズ随一の娯楽作に仕立て上げた手腕は並じゃない。