秀逸なラストシーンへとつながる伏線
物語は中盤、カエルちゃんや、たぬきなどといった近所で仲間となった妖怪たちが登場。宴会の席で「お父さんに捨てられた」と言う、かりんの家庭環境を聞き、同情し、涙する。
この話を寝転びながら聞いていたあんずちゃんは、後日、かりんに「お父さんに捨てられたなんて、嘘だ。嘘つき、かりん♪ 嘘つき、かりん♪」と言ってしまう。
当然、かりんは、「あんたに何がわかるのよ! お母さんの命日に帰って来るっていってたのに、帰って来ないじゃん!」と言い返す。
このシーンこそが筆者は、本作最大の名場面だと思っている。あんずちゃんは、日常生活で適当に鼻歌を口ずさんでいるキャラクターなわけだが、この場面においては、かりんちゃんの本音を見抜いた歌を歌ったのだから。
きっと、かりんも本当に父親に捨てられたとは、思っていないし、思いたくはない。だか、借金まみれですぐに姿を消す父親に、常にイラついてきたことは事実なのだ。
そして、何故か、ベッドの上で逆立ちをするかりんに対し「何、やってんの?」と声をかけるあんずちゃんと、それをウザがるかりん。これには筆者もあんずちゃんと同意見だったが、ラストへとつながる非常に大切な伏線となっているのだ。
そんな両者の言い争いにも、ぜひ注目していただきたい。
そして、物語序盤から登場し、あんずちゃんを「兄貴」と慕い、不良グループを名乗る、かりんと同級生である小学5年生男子の、井上と林。
こいつらは、かりんに一目惚れするわけだが、当然、原作にはないその絡め方も上手い。このシーンは『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)のオマージュだろう。
小学5年生という、男女の間で子供っぽさ、大人っぽさが分かれる微妙な年齢。かりんの「どこか連れてってよ」というセリフ。さらに、終盤にて、東京の男友達に「約束どおり、駆け落ちしようよ」などと言う場面も、『打ち上げ花火~』を意識していることを強く感じさせる。