「地獄」での拭えない違和感

　物語中盤、東京へ母親のお墓参りに行くというかりんに同行する、あんずちゃん。しかし、かりんの前に「貧乏神」が現れ、母親がいるという地獄へ行くことになる。

　地獄で清掃員として働く母親を見つけ、物語終盤、母親と抱擁するかりん。そして彼女は、「逆立ちできるようになったんだよ！」と、母親に告げる。すると、お母さんは、華麗な逆立ち歩きをしながら笑顔で去ってゆくのだ。

　実は、彼女の母親は逆立ちが特異であり、先述したかりんの逆立ちは、お母さんの特異技を真似した描写であり、秀逸なラストへと繋がるグッとくる描写になっていたのだ。

　ラストシーンで、借金を返済した父・哲也がかりんを迎えに来る。しかし、かりんは最終的に草成寺に戻ることを選ぶという、かりんがやっと自分の居場所を見つける幸せなシーンで幕を閉じるが、このエンディング、個人的には父と共に現実社会に戻る方が良かったのではと思う。

　というのも、かりんが戻ってくるまでに、不思議な世界から元の社会に戻る方が、かりんのその後の成長を想像できるからだ。さらに、あんずちゃんが寺の境内を箒で掃除をしているシーンが映し出されるが、このシーンがさらに活きたのではないだろうか。

　以上、色々と綴ってしまったが、声優陣の名演が際立つ心温まる映画であることは間違いないことも、強調して、本レビューは終わりにしたい。

（文・ZAKKY）

【作品情報】
『化け猫あんずちゃん』
2024 年7⽉19⽇(⾦)全国公開
監督︓久野遥⼦・⼭下敦弘
原作︓いましろたかし『化け猫あんずちゃん』（講談社 KCデラックス 刊）
キャスト（声・動き）︓森⼭未來 五藤希愛
⻘⽊崇⾼ 市川実和⼦ 鈴⽊慶⼀ ⽔澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション︓シンエイ動画×Miyu Productions
脚本︓いまおかしんじ ⾳楽︓鈴⽊慶⼀ 編集︓⼩島俊彦
キャラクターデザイン︓久野遥⼦ 作画監督︓⽯舘波⼦ 中内友紀恵
美術監督& ⾊彩設計︓Julien De Man コンポジット開発︓Guillaume Cassuto
撮影監督︓牧野真⼈ CG監督︓飯塚智⾹ ⾳響監督︓滝野ますみ
実写制作協⼒︓マッチポイント
撮影︓池内義浩 録⾳︓弥栄裕樹 スタイリスト︓伊賀⼤介
主題歌︓「またたび」佐藤千亜妃（A.S.A.B）
プロデューサー︓近藤慶⼀ Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作︓化け猫あんずちゃん製作委員会
配給︓TOHO NEXT ©いましろたかし・講談社／化け猫あんずちゃん製作委員会
公式サイト
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