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今、ボブ・マーリーの伝記映画が求められるワケ。『ONE LOVE』評価レビュー(2)目利きをも唸らせる秀逸な脚本とは?

伝説のレゲエミュージシャンの波乱万丈な人生を映画化した『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が公開中。1976年から78年にかけての「激動の1年半」にフォーカスした本作を、ブラックミュージックに精通する文筆家・長谷川町蔵によるレビューをお届け。作品の魅力に迫る。(文:長谷川町蔵)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】

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【著者プロフィール:長谷川町蔵】

東京都町田市出身。映画や音楽を中心として色々なものについて文章を書いている文筆家。主な著書に「インナー・シティ・ブルース」(スペースシャワーブックス)、「ヤング・アダルトU.S.A.」(山崎まどかとの共著、DU BOOKS)、「文化系のためのヒップホップ入門1〜3」(大和田俊之との共著、アルテス・パブリッシング)など。

ボブ・マーリーのキャリアを理解した作り手による大胆な物語構成

映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
© 2024 PARAMOUNT PICTURES

レゲエ・ファンの中には、ピーター・トッシュやバニー・ウェイラーとの友情が殆ど描かれないことに不満を抱く人もいるかもしれない。後にそれぞれソロ・アーティストとして成功するふたりが在籍していた時代のウェイラーズは、マーリーのバックバンドではなくイーブンな関係のコーラストリオだった。

しかしそれでも彼らがスカの名門レーベル、スタジオ・ワンのオーナー、コクソン・ドットのもとに押しかけ、伝説的なプロデューサー、リー・ペリーが見守る前で初めてのヒット曲「シマー・ダウン」を披露するシーンはしっかり用意されている。本作のスタッフは、マーリーのキャリアをよく知らないのではなく、理解した上で敢えて『エキソダス』期にスポットを当てているのだ。

こうした大胆な判断が、ウィリアムズ姉妹の伝記映画『ドリームプラン』(2021)で知られるレイナルド・マーカス・グリーンなのか、脚本家のひとりとしてクレジットされている映画『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2014)のテレンス・ウィンターによるものかは明らかでないのだが、結果としては映画を良い方向に導いたと思う。

(文・長谷川町蔵)

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