かえるくんが救った「東京」
本作を見た多くの人が自問自答するだろう。かえるくんが命懸けで守った「東京」という箱の中身は何なのだろう、と。
あれから13年。「東京」という箱の中には小村や片桐のように、震災後も変わらない日常を続けている人々のそれぞれの暮らしがある。たとえば、音楽と猫を愛し、パスタを茹でる日常を大切にしているような、ささやかな暮らしである。
震災によって生き方を変えたキョウコのような人々にとっては、小村や片桐の日常こそ非日常に思えるかもしれない。それは震災直後の「東京」がピエール・フォルデス監督という外国の視点で描かれていることでより強く可視化されているように思えた。そこに物語の世界で生きる登場人物と現実世界で生きるわたしたちと同様の相互関係性があるようにも。