ラストではドラマでお馴染みのキャストも登場
原作のイメージ、テレビドラマの世界観を崩すことなく、さらに、驚くような豪華なキャスティングによって、スケールアップに成功した本作。しかし、そんな中でもいい意味で全く変わらないのが菅田将暉演じる久能整という人物。
どこまでもウンチクや持論をまくし立てる“面倒くさい”男なのだ。が、その面倒くさい発言の中には物事の本質をついているものや、観客までもハッとさせるようなものも含まれている。本作では特に「乾く前のセメント」のセリフが印象深い。
「子どもって乾く前のセメントみたいなんです」
このセリフは、アメリカの児童心理学者の言葉を引用している。子どもの頃に経験したことが大人になってもその形のまま残ってしまうという意味だ。たとえ相手が悪意を持たずにいたとしても、子どもだから理解できないだろう、そんな軽い気持ちでやったことが、そのまま深い跡となって後々に大きな影響を残すこともある。
菅田将暉自身も、この「乾く前のセメント」を原作で1番好きなセリフだとドラマ放送中でのインタビューで回答している。
物語の最後、新幹線で広島から帰京する整をヨソに、事件の解決に整が協力していたことを広島県警からの電話で知り、喜ぶ風呂光聖子(伊藤沙莉)、池本優人(尾上松也)、青砥成昭(筒井道隆)といった大隣署の面々、そして、意味ありげに微笑を浮かべるガロが映し出される。
田村由美氏による原作漫画も連載が続いていることから、このエンディングは続編への序章なのかとも感じさせ、期待感が膨らむ。
また、整のような変わり者を完璧に演じた菅田将暉は、シリアスな役から恋愛映画、時代劇、さらにはauのCMでの“鬼ちゃん”役のようなコメディアン顔負けの三枚目も難なく演じ分ける類まれな才能の持ち主だ。2021年に結婚した小松菜奈と刺激し合うように、俳優として成長していく様を、楽しみながら見守っていきたい。
(文・寺島武志)