こだわりぬかれたE.T.の造形と自転車のシーンの爽快感ー映像の魅力
本作は、映画のみならず、特撮の世界にも多大な影響を及ぼした。特に注目すべきは、本作の「主人公」であるE.T.の造形だ。
このキャラクターを生み出したのは、イタリアの特殊効果アーティストであるカルロ・ランバルディ。マリオ・パーヴァやフェデリコ・フェリーニ、ダリオ・アルジェントといった名匠たちとタッグを組んできた特撮界の巨匠で、スピルバーグとは『未知との遭遇』でタッグを組んでいる。
ランバルディは、E.T.の特徴的な外見を表現するため、カエルやカワウソなどさまざまな動物の動きや行動を何カ月もかけて研究。さらに、皮膚にシリコンや発泡ゴムを使用することでリアルな質感を表現しており、観客を惹きつけるために特に重要とされた目の開発では、プロデューサーがわざわざ眼科研究所を訪れて本物の目とガラスの目を研究したという。
なお、本作のために作られたE.T.の人形は計4体で、動作シーンでは現役の人形遣いのチームがケーブルやモーターを巧みに操りながら動かしている。大人たちの匠の技の結集が、E.T.を映画史に残るキャラクターたらしめたのだ。
そして、本作といえば、印象的な映像の数々も忘れてはならない。特に、自転車に乗ったエリオットとE.T.が、満月が浮かぶ夜空を飛ぶシーンやラストのカーチェイスシーンは、映画史に残る名シーンといっても過言ではないだろう。
スピルバーグは、『未知との遭遇』の撮影時、キャストとしてフランスからヌーヴェルバーグの名匠フランソワ・トリュフォーを招聘している。この時トリュフォーは、スピルバーグの子どもを撮るセンスを直観し、子どもを主役に据えた映画を撮るといいだろうとアドバイスを授けたという。ちなみに、トリュフォーは自転車を運動感豊かに、きわめて魅力的に撮ることにおいて右に出る者はいない映画作家である。
永遠の子供スティーブン・スピルバーグ。本作は、そんなスピルバーグの頭の中のおもちゃ箱をひっくり返したような作品なのかもしれない。