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ドキュメンタリー仕込みのリアリズムー配役の魅力

エレン・バースティン
クリス役のエレン・バースティン【Getty Images】

 フリードキンのリアリティへのこだわりは、配役のみならず演技指導にも見られる。

 まず、ミラーの演技指導の際は、なんとショットガンを発砲し彼の驚いた顔を撮影したという。さらに、オマリー演じるダイアー神父が親友の死を悼む最後のシーンでは、なんと夕方から朝まで延々1つのカットを撮り続けて演者を追い詰めた挙句、あろうことかオマリーに平手打ちを喰らわせて自然な涙を引き出している。

「被害者」は男性だけではない。悪魔がリーガンのベッドを揺さぶるシーンでは、ベッドを必要以上に揺さぶることで演者であるブレアの自然な悲鳴を引き出している。なお、リーガンは、フリードキンが亡くなった際、腰にハーネスをつけた状態で何度も身体をけいれんさせたことから、深刻な腰痛に悩まされ続けていることを明かし、「私の人生を永遠に変えた人」と彼を評している。

 母親役のバースティンも骨が歪むほどの深刻な後遺症を負っている。クリスが十字架を性器に刺すリーガンを止めて反撃を食らうシーンを撮影する際、フリードキンが恐る恐る倒れるエレンの演技を嫌い、いきなりピアノ線でエレンを引っ張って転倒させたからだ。

 加えて撮影では、出演者たちの息が白くなるようクーラーを4台使って室温を超低音に設定。ライトなどで温度が上がっている場合は、わざわざ室温が下がるのを待って撮影を行ったのだという。

 監督のフリードキンは、元々ドキュメンタリー畑出身の映画監督として知られており、前作『フレンチ・コネクション』でも、熱血刑事ドイルの犯罪捜査をドキュメンタリータッチで描き、アカデミー作品賞をはじめとする8つの賞に輝いた。本作では、いわばキャスト陣を徹底的に追い詰めることで、リアルな恐怖をフィルムに収めていったのだ。

 リアルといえば、悪魔に取り憑かれたリーガンの身の毛もよだつ特殊メイクも忘れてはならない。手掛けたのは、『ゴッドファーザー』(1972)や『タクシードライバー』(1976)など、数々の名作で特殊メイクを担当してきたディック・スミスだ。

 本作ではリーガンの他にメリン神父役のマックス・フォン・シドーのメイクも担当。当時44歳のシドーを白髪の老神父に変身させている。晩年のシドーの姿と本作のメリン神父のビジュアルにほとんど違和感がないことからも彼の卓越した技術がうかがいしれる。

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