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トムとニコール、仮面をかぶった夫婦ー配役の魅力

トム・クルーズとニコール・キッドマン夫妻【Getty Images】
トムクルーズとニコールキッドマン夫妻Getty Images

本作のキャストといえば、まずはトム・クルーズとニコール・キッドマン夫妻をあげなければならない。

従来のキューブリック作品は、メジャーなスター俳優をメインキャストに据えることが少なかった。これは、キューブリックがネームバリューより役者のパーソナリティを重視していることの何よりの証左だろう。

一方、本作では、典型的なハリウッドスターであるトムとニコールが起用されている。このキャスティングには、リアリティの追求以上に、2人が素と役の2つの仮面をかぶることを生業とした「仮面夫婦」であることが理由に挙げられるだろう。

また本作は、400日もの日数が撮影に費やされ、「撮影期間最長の映画」としてギネスブックに認定されている。なお、キューブリックは、ここまで俳優を振り回した挙句、キューブリックの没後、盟友の俳優のR・リー・アーメイが語ったところによると「今回の映画はクソだ」と語っていたのだというから、映画監督とはつくづく困った生き物だ。

なお、本作では当初、ヴィクター・ジーグラ―役を『地獄の黙示録』(1979)のハーヴェイ・カイテルが、マリオン役を『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』(1994)のジェニファー・ジェイソン・リーが演じていたが、キューブリックとの確執や撮影期間の長さなどさまざまな理由で降板。代わりにシドニー・ポラック、マリー・リチャードソンに交替して撮影し直されている。

なお、マリオンの婚約者カールを演じるのはトーマス・ギブソンという俳優で、トム・クルーズと生年月日が一緒であることや、ミドルネームが「クルーズ」であることから、作中では「ビルの鏡像」として登場している。こういった細かなキャスティングにもキューブリックの陰謀論志向が垣間見える。

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