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皮肉の効いた最高のラストとは…?『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』考察&評価レビュー。異色の陰謀論映画の魅力を徹底解説

冷戦期、アメリカとソ連の間で交わされていた熾烈な宇宙開発競争に終止符を打った人類初の月面着陸。しかし、この「偉業」には、当初からさまざまな陰謀論が語られていた。今回は、そんな「アポロ計画陰謀論」を扱ったApple TV+の傑作コメディ映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を独自の視点で徹底解剖する。(文・中川真知子)

※このレビューでは映画のクライマックスについて言及があります。

【著者プロフィール】

中川真知子。映画xテクノロジーライター。アメリカにて映画学を学んだのち、ハリウッドのキッズ向けパペットアニメーション制作スタジオにてインターンシップを経験。帰国後は字幕制作会社で字幕編集や、アニメーションスタジオで3D制作進行に従事し、オーストラリアのVFXスタジオ「Animal Logic」にてプロダクションアシスタントとして働く。2007年よりライターとして活動開始。「日経クロステック」にて連載「映画×TECH〜映画とテックの交差点〜」、「Japan In-depth」にて連載「中川真知子のシネマ進行」を持つ。「ギズモードジャパン」「リアルサウンド」などに映画関連記事を寄稿。

人類の「偉大なる一歩」

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
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「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」

 この有名な言葉は、1969年7月20日に人類初の月面着陸を達成したニール・アームストロングによるものだ。

 この瞬間、アメリカはソ連との間で繰り広げられていた熾烈な宇宙開発戦争に勝利した。

 だが、数年後に「アメリカの月面着陸は嘘だった」と噂されるようになった。月面着陸の様子は全世界に生中継されていたが、それが作られた映像だったという陰謀論が展開されたのだ。

 理由はいくつかあるが、空気が存在しない月面で星条旗がはためいていることや、月面の石にアルファベットが書かれているように見えることなどが挙げられる。

 また、技術に難しいことや、ロシアに遅れをとっていたアメリカが非常に焦っていたことなども、陰謀論の後押しをした。

 この陰謀論は真実味を増して語られるようになり、「『2001年宇宙の旅』(1968)を撮ったスタンリー・キューブリック監督が生中継用の撮影を担当した」と具体名まで出るようになった。

 技術の進化に伴い、科学的根拠や証拠がいくつも出てきているために陰謀論は完全に否定されているが、それでも根強く支持する人がいる。

 そこで、Apple TV+はこの陰謀論から着想を得た映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を作成。陰謀論を受け入れた上で、ウィットなコメディに仕上げた。

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