陰謀論を否定するための映画
だが、宇宙開発や宇宙ビジネスに興味がない人によって陰謀論が事実のように語られてしまう。
筆者は2019年に公開したニール・アームストロング船長のNASAミッションを描いた『ファースト・マン』のプロモーションで日本を訪れたデイミアン・チャゼル監督にインタビューする機会に恵まれたが、その際に「有人月面着陸と陰謀論はセットで語られるが、陰謀論を主張するには、このミッションはあまりにも多くの証拠が残っている」と監督は語った。
また、月面着陸の生中継を見守った人たちから言わせると、「陰謀論など馬鹿馬鹿しく聞こえる」らしい。
その根拠のひとつとして「重力が地球の約1/6しかない月面で砂が舞う様子ひとつとっても、当時の技術では再現できなかったのだから」と話した。
だが、草の根的に根拠を示しても効果は薄い。そこで、全てを受け入れ、効果的かつ皮肉をこめた方法で陰謀論を否定する方法として映画が選ばれた可能性が考えられる(といっても、ハリウッドは常に映画のネタを探しているので、映画化することが取り立てて画期的というわけではないのだが……)。