二重化される主人公アーサーの生
ぼろぼろのスーツをまとったイギリス人(もしくはアイルランド人)アーサーを駅で待ちかまえているのは、トンバローリ仲間のポッロ(ヴィンチェンツォ・ネモラート)。仲間たちはこの不機嫌な異邦人に手を焼きながらもあれこれと世話を焼こうとする。なぜなら彼が発掘場所を発見する名手、いわゆるダウジング(金属の振り子を握って歩きながら、井戸、貴金属、石油のありかなどを見つける能力)の使い手だからである。
誰も彼Arthurを本来の英語発音アーサーと呼ぶ人はおらず、イタリア語発音でアルトゥールと呼ぶ。アーサー/アルトゥール。現実/夢の中。地上/地下。彼の生はどうやら運命的に二重化されている模様である。
人類文明は墓とともに始まった。満ち足りた衣食住というだけでは、文明を語るには不十分である。いにしえの人類は隣村からの来訪者や異邦人を歓待し、その者が語る未知の物語に心を酔わせ、また自分たちが死んだあとに訪ねる世界がどんなものだろうかと思いを馳せた。
人類は愛する死者のために心を込めて墓を造成し、故人が生前と同じ富と幸福を満喫できるように、すばらしい副葬品の数々を製作し、故人の遺体のかたわらに設置した。人類が洞窟の壁画を卒業し、とうとう自覚的にアートというジャンルを創出した瞬間である。西はエジプトのピラミッドから、始皇帝の兵馬俑、東の果ての前方後円墳にいたるまで、優れた人類文明はつねに墓、そして副葬品への情熱とともにあったのである。
古代エトルリア人たちが生み出した至高の副葬品を盗掘し、密売することで生計を立てるアーサーやポッロなどのトンバローリたちは、本当にバチ当たりの連中だ。遠からず、この小悪党どもの頭上には神の鉄槌が下されるだろう。