最後まで楽しい仕掛けが満載
ディズニー映画は、私たちを未知の世界に連れていってくれる。映画は、現実とファンタジーの世界の架け橋だ。今回は、不気味で愛らしいゴーストたちの世界に誘ってくれる。
動く甲冑に、アトラクションのように椅子が走るポルターガイスト、怖いのに楽しい仕掛けと、ディズニーの世界観を表現するために作り込まれたCGは、まるで映画の中に入ったかのような没入感を引き起こす。
個性豊かなゴーストたちが仕掛けるいたずらと、屋敷の中で起こる摩訶不思議な現象は、ディズニー映画ならではの幻想的な演出になっている。
そしてホラーコメディお約束の展開と、ゴーストに翻弄されるキャラクターたちが繰り広げる物語は、妻を亡くした悲しみから立ち直ることができていない心霊写真家のベンを中心に展開される。
ベンは仕事を理由に最愛の妻に冷たくあたり、そのまま事故で妻を亡くしてしまう。後悔の念を抱き、悲しみに暮れるベンは、心の傷に付け込まれ、ゴーストに狙われる…。大切な人を亡くした経験がある人なら、ベンの悲しみに深く共感するだろう。
こうしたメランコリック(憂鬱的)な描写は、他のディズニー映画ではあまり見られないものでもあり、大切な人との時間が何よりも尊いものだと思い出させてくれる。
人生の中で、後悔や乗り越えられないような苦しみに苛まれることは、誰にだってあるだろう。しかし、どんなに時間がかかっても、ベンが踏み出したような、小さな一歩で人生は変わる。それが本作が発する力強いメッセージだ。
本作は、悲しみや苦しみといった沈んでしまいがちな心にそっと明かりを灯し、ふんわりと浄化していくような作品になっている。そして最後の最後まで子供心を忘れない、楽しい仕掛けが満載だ。
スクリーン以外は何も見えない映画館で鑑賞すれば、アトラクションのように没入感を味わえるだろう。子供も大人も、ぜひ劇場で体験してほしい。
(文・野原まりこ)
9月1日(金)全国劇場にて公開
【作品情報】
原題:Haunted Mansion
監督:ジャスティン・シミエン
出演:ロザリオ・ドーソン/オーウェン・ウィルソン/ティファニー・ハディッシュ
ラキース・スタンフィールド/ダニー・デヴィート/ジャレッド・レト/ジェイミー・リー・カーティス
全米公開:2023年7月28日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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