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双子が顔に宿した悲哀―配役の魅力

女優のブライス・ダラス・ハワード【Getty Images】
メラニー役のブライス・ダラス・ハワード【Getty Images】

 本作の配役といえば、まずはジョージ役のマット・デイモンを挙げなければならない。

 マットといえば、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)の天才数学者や、『ボーン・アイデンティティ』(2002)のアイデンティティを失った男の演技が印象に残るが、本作では、自らの能力に苦悩するどこか冴えない普通の男を、実に静かに、かつ哀愁たっぷりに演じている。その姿はまるで受難に耐え忍ぶ修道士のようだ。なお、彼のイーストウッド作品への出演は『インビクタス』(2009)に続いて2度目で、イーストウッド自身のラブコールで実現したという。

 そして、最も印象深いのが、ジョージ役とマーカス役を演じたフランキー&ジョージ・マクラレン兄弟だろう。2人はなんと子役ではなく素人で、100組以上の双子の中から選ばれたとのことで、マットによれば彼らの顔つきが選定の決め手となったという。深い悲しみをたたえた彼らの演技は、とても素人とは思えない見事なものだ。

 なお、物語上はジェイソン役のフランキーが途中で退場してしまうが、撮影では2人に同じ演技をさせ、ナーバスにならないように気をつかっていたとのこと。また、マットも本作のクライマックスであるマーカスの霊視のシーンでさまざまな質問をし、自然なリアクションができるようサポートしていたのだという。

また、マリー役を演じるセシル・ドゥ・フランスは、ダルデンヌ兄弟監督作品『少年と自転車』(2011)などで知られるベルギー出身の女優。演劇出身女優ならではの安定した演技力で、苦悩する女性の内面を体現している。

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