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ヒットマン(殺し屋)の映画史とは? 『ヒットマン』徹底考察&評価レビュー。リチャード・リンクレイター監督の演出を解説

text by 荻野洋一

映画『6歳のボクが、大人になるまで。』(2014)の名匠リチャード・リンクレイター監督の最新作『ヒットマン』が9月13日(金)より公開される。プロの殺し屋になりすまし、殺人依頼者を70名も逮捕に導いた実在の人物を描いた本作の魅力を紐解くレビューをお届けする。(文・荻野洋一)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール:荻野洋一】

映画評論家/番組等の構成演出。早稲田大学政経学部卒。映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」で評論デビュー。「キネマ旬報」「リアルサウンド」「現代ビジネス」「NOBODY」「boid マガジン」「映画芸術」などの媒体で映画評を寄稿する。7月末に初の単著『ばらばらとなりし花びらの欠片に捧ぐ』(リトルモア刊)を上梓。この本はなんと600ページ超の大冊となった。

グレン・パウエルとリチャード・リンクレイター。4度目のコラボ

映画『ヒットマン』
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 『トップガン マーヴェリック』(2022)で“ハングマン”という通称を持つ、キザなパイロットを演じてブレイクしたグレン・パウエル(1988年テキサス州オースティン生まれ)は、現在二枚目俳優として、またプロデューサーや脚本家など裏方としてもキャリアが最高潮に達しつつある。

 “ハングマン”を演じた縁で、米海軍航空ドキュメンタリー『ブルーエンジェルズ』(2024、Amazonプライムで配信中)でプロデューサーをつとめたほか、2024年だけで主演作がなんと3本も立て続けに日本公開されている。ラブコメ『恋するプリテンダー』(2023、ウィル・グラック監督)、竜巻パニック映画『ツイスターズ』(2024、リー・アイザック・チョン監督)、そしてリチャード・リンクレイター監督の最新作となるクライム・コメディ『ヒットマン』(2023)の3本である。

 『ヒットマン』への出演は、出演依頼が殺到するなかでのよくある出会いなどではない。グレン・パウエル自身、もともとリチャード・リンクレイター一派なのである。

 パウエルとリンクレイターの関係は、パウエルがまだ14歳の時に『ファーストフード・ネイション』(2006)に子役として出演したことから始まる。そして『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016)でのキザな大学野球部員フィネガン役、Netflixアニメ『アポロ10号1/2:宇宙時代のアドベンチャー』(2022)での声優出演、そして今回の『ヒットマン』でリンクレイター作品への参加はとうとう4度目となる。

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