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リチャード・リンクレイターの今後

映画『ヒットマン』
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 リチャード・リンクレイターは今回の『ヒットマン』において、子役時代からの盟友グレン・パウエルの主演、共同脚本、プロデュースという全霊の貢献によって、アメリカ映画のフロントランナーとして返り咲いた。リンクレイターの今後の予定についてくわしく書いて、本稿を閉じようと思う。この予定記述を見ても興奮しない映画ファンなんて、おそらくひとりもいないだろうから。

 まず彼は2025年完成予定で『Nouvelle Vague(原題)』という新作のポスプロ作業に入っている。これはなんと『勝手にしやがれ』(1960)をパリ市内で撮影中のジャン=リュック・ゴダール、ジーン・セバーグ、ジャン=ポール・ベルモンドらの実話の映画化である。『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』で主人公ジェイクの彼女になっていく新入生ビヴァリーを演じたゾーイ・ドゥイッチが、ベリーショートの「セシルカット」となって主人公ジーン・セバーグを演じている。

 次に、撮影終了したばかりの『Blue Moon(原題)』。「ブルー・ムーン」や「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など数多くの名曲で知られる作詞家ロレンツ・ハート(1895-1943)がアルコール依存症に苦悶する物語だそうで、ロレンツ・ハートの役をイーサン・ホークが演じている。

 そしてスティーヴン・ソンドハイムの名作ミュージカル『Merrily We Roll Along(原題)』の映画化は、すでに一部撮影開始されているが、1981年にブロードウェイで初演されたこのバックステージものは、現在時制から20年前へと遡行するストーリーテリングを有し、撮影終了まであと17年を要する予定。リチャード・リンクレイター監督にとっては、撮影期間12年を要した『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)をさらに大幅に更新する、クレイジーかつモニュメンタルな大作となるだろう。

(文:荻野洋一)

【『ヒットマン』 作品情報】

監督:リチャード・リンクレイター 『ビフォア・サンライズ恋人までの距離<ディスタンス>』(95)ほか「ビフォア」三部作 『スクール・オブ・ロック』(03) 『6歳のボクが、大人になるまで。』(14) 
脚本:リチャード・リンクレイター&グレン・パウエル
出演・グレン・パウエル 『トップガン マーヴェリック』(22) 『ツイスターズ』(8/1公開)
アドリア・アルホナ 『6アンダーグラウンド』(19) 『モービウス』(22) 「キャシアン・アンドー」(22)
オースティン・アメリオ 「ウォーキング・デッド」シリーズ(15~23)
レタ 『グッド・ボーイズ』(19) 『グレイテスト・ヒッツ』(24)
サンジャイ・ラオ
原題:HIT MAN/2023年/アメリカ映画/英語/115分/シネスコ/カラー/5.1ch/日本語字幕:星加久実
© 2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED 
配給: KADOKAWA  PG12
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