恐怖の中に潜む笑い―脚本の魅力
本作の物語は、『死霊のはらわた』(1981年)や『ミッドサマー』(2019年)同様、旅人が見知らぬ土地で怪異に巻き込まれるという「バカンスホラー」と呼べるジャンルの作品だ。しかし、本作には、これらの作品とは決定的に違う点がある。それは、B級映画ならではの荒唐無稽さだ。
あらすじからも分かる通り、本作は大学生3人によるセックス・ドラッグまみれの珍道中から幕を開ける。そのため、本作の前半は物語とは直接関係のないセックスシーンで溢れかえっている。しかし、中盤になると徐々に雲行きが怪しくなり、後半になってようやくスプラッター映画らしくなってくるのだ。
加えて、通常のホラー映画では真っ先に死にそうなキャラクターであるパクストンが生き残るのも本作の大きな特徴だろう。特に終盤、拘束された状態からなんとか逃げおおせた彼が急に覚醒し、武器を持って戦うシーンには、これまでの体たらくな彼との落差から笑いが禁じ得ない。
笑いといえば、オリーの尻踊りなど、細かな笑いが散りばめられている。特に、パクストンをチェーンソーで解体しようとした男が血だまりで転び、自分で自分を解体してしまうシーンには、思わず吹き出してしまうこと請け合いだ。
笑いの極意が「緊張と緩和」であることを考えると、本作はホラー映画であるとともにコメディ映画でもあるのかもしれない。