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なぜ賛否が分かれている? 映画『ジョーカー2』の果敢な挑戦とは? 徹底考察&評価レビュー。ミュージカルシーンの是非は?

社会現象を巻き起こした映画『ジョーカー』。その続編にして完結編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が、10月11日(金)より公開される。ジョーカーと謎の女性リーとの関係を軸に、法廷劇やミュージカル要素が織り交ぜられた本作のレビューをお届けする。(文・村松健太郎)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール:村松健太郎】

脳梗塞と付き合いも15年目を越えた映画文筆屋。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在各種WEB媒体を中心に記事を執筆。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』 狂気が再び幕を開ける

(c) & TM DC (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories
(c) & TM DC (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

 あの『ジョーカー』から約5年。サブタイトルである“フォリ・ア・ドゥ=Folie à Deux”とは、フランス語で“2人狂い”を意味し、まさかの再演となったジョーカーによる世紀のショーにふさわしいものと言えるだろう。
 
 2019年に公開された映画『ジョーカー』はDCコミックスの代表的なヒーローである“バットマン”に登場する、人気ヴィラン“ジョーカー”にインスパイアされた作品として誕生した。いわゆるアメコミ映画、ヒーロー映画とは一線を画した同作は、第76回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞するという快挙を成し遂げた。

 さらにタイトルロールのジョーカー=アーサー・フレックを演じたホアキン・フェニックスが第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。

 R指定映画史上最大級のヒット作となり、日本でも興行収入50億円を超えるメガヒットを記録し、社会現象を巻き起こした。

 待望の続編となる本作は、ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映されると賛否両論を巻き起こした。完成披露試写会で鑑賞した筆者もまた、さまざまな感情が交錯し、賛否それぞれの感想を同時に持った。

 まず本作は、DCコミックスのキャラクターがベースになってはいるものの、その色合いは非常に薄くなったと言える。

 原作コミックシリーズではヴィランの“トゥーフェイス”となる、ハービー・デント検事が登場するなど、ニヤリとさせる要素もあるが、それはあくまでアクセントの1つに過ぎない。

 前作では、ジョーカーことアーサーが、ブルース・ウェイン(バットマン)の父親トーマス・ウェインと絡むシーンがあった。さらに、子供の頃のブルース・ウェインが登場するなど原作コミックとの繋がりを感じさせる部分も多かったが、今回は極端に少なくなっている。

 この点からも分かる通り、本作はこれまでのDCコミックスの世界観を描くことには関心が払われておらず、あくまで“映画『ジョーカー』の続編”をいかに成立させるのか、に主眼が置かれている。

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