ナチス戦犯の”死体”をどうする? 異色の戦争映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』徹底考察。歴史的背景&見どころ解説
text by 寺島武志
ナチスの戦犯、アドルフ・アイヒマンを知っているだろうか。彼の死刑をめぐる差別や摩擦を描いた映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』が公開中だ。戦争は終わっても、火種は残り続ける。今回は、戦争のリアルが綴られた新たな傑作の魅力をひも解いていく。(文:寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
アドルフ・アイヒマンの死刑をめぐる知られざる物語
ホロコーストを題材とした映画は数多く存在する。その中には、不朽の名作『アンネの日記』をはじめとした、ユダヤ人側の立場から描かれたものが多い。
対して、ヒトラー率いるナチス側から描いたものとしては『ヒトラー ~最期の12日間~』(2004)や『ヒトラーのための虐殺会議』(2022)といった作品が、それにあたるだろう。
本作は、ナチス支配下にあるドイツの秘密警察に属し、ナチス親衛隊中佐の肩書を得て、500万人ものユダヤ人を強制収容所のガス室に送ったアドルフ・アイヒマンの死刑をめぐる、周囲の葛藤や苦悩を描いている。