「ヤクザ×古典落語」の名作ドラマ『タイガー&ドラゴン』
「ヤクザや不良が意外なジャンルにのめり込む物語」として忘れてはいけないのが、2005年放送の宮藤官九郎脚本のドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系)だろう。
狂児が聡実くんにカラオケを教わるように、借金を取り立てに来た新宿流星会のヤクザ・山崎虎児(長瀬智也)は、寄席で見た落語に衝撃を受け、債務者であり落語家の林家亭どん兵衛(西田敏行)に弟子入りする。
虎児とどん兵衛、「債務者と債権者」として出会った二人は、「師匠と弟子」に、最終的には「家族のような存在」になっていく。
中学生の繊細な心に土足でズカズカと上がり込んでくる、バカで真っ直ぐでノンデリカシーな成田狂児の姿が、この山崎虎児に妙に重なって仕方なかった。
市民ホールと浅草演芸ホール、同じホールでもかなり違うホールの客席で、狂児は合唱曲『影絵』を歌う聡実くんを見つけ、虎児は古典落語『三枚起請』を披露する噺家のどん兵衛を目撃する。どちらも師匠に出会った瞬間から、急速に物語が動き出していく。
「♪俺の、俺の、俺の話を聞け!」の歌詞でお馴染みのクレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」はドラマ『タイガー&ドラゴン』のOPテーマであり、『カラオケ行こ!』の劇中で狂児が熱唱して98点の高得点を叩き出す曲だ。
聴き終わった聡実くんが「いかにもって感じはありますが」と感想を言うが、その「いかにも」というイメージは、『タイガー&ドラゴン』によって植え付けられたのかもしれない。