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陶酔感溢れるカメラワーク―映像の魅力

ギャスパー・ノエ監督
ギャスパーノエ監督Getty Images

本作の映像表現は、他のノエ作品同様、他の追随を許さない圧倒的なオリジナリティに貫かれている。

まず冒頭では、いきなりエンドロールが逆再生で流れ始める。時系列が逆転しているわけだから当然と言えば当然だが、はじめて見た観客は面食らうこと請け合いだろう。

しかも、エンドロールのクレジットは、「R」「E」「N」の文字が全て鏡文字となっており、なんとも芸が細かい。

本編のカメラワークは、基本ワンシーン・ワンカットで撮影されている。

特に序盤のゲイクラブのシーンは、ドローンや手持ちカメラを使った激しく暴力的なカメラワークが印象的で、真っ赤で刺激的な照明とともに思わず目を背けてしまう人もいることだろう。

加えて、シーンの終わりには、カメラがまっすぐ夜空に向けられてそのまま次のシーンに映るなど、シーン間のつなぎがシームレスなのも大きな特徴だ。そのため、記憶や悪夢の中を漂っているような独特の陶酔感がある映像の仕上がっている。

また、ゲイクラブからマルキュスたちが警察に連行されるシーンや、最後にアレックスが草むらで読書しているシーンでは、明滅するパトカーのサイレンやくるくると回る噴水がドローンによって真上から捉えられ、これらの回転に併せてカメラも高速回転する。この演出には、「時間が巻き戻る」という本作のコンセプトが如実に表れていると言えるだろう。

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