カーチェイスでカタをつける『マッドマックス』スタイル
物語の軸となるのは、フュリオサの孤独な復讐劇だ。とはいえ、前日譚なので、“その後”は決まっているというか、少なくともフュリオサが死ぬことはない。それでも危機が訪れるたびにハラハラするし、それぞれの思惑が交差する予想外な展開が続くので、なんともいえない緊張感が続く。
そんな復讐も報復も、反乱も革命も、すべてカーチェイスでカタをつけるというのが『マッドマックス』スタイル。奇想天外な外観のビーグルたちが、荒れ果てた砂漠を疾走しては、無惨に散っていく。ビジュアル、サウンド、臨場感。どれもが圧倒的で、興奮して息を飲むとはこのことだ。
特に中盤で展開する、爆走するウォータンクに様々なマシンが群がっていく追走劇は、シリーズ伝統のお家芸がさらに進化した、究極のカーチェイスとなっている。
圧倒的なスピードと、唐突に訪れる死。カメラは縦横無尽に動きまくり、クルマの前後左右から、運転席、ボンネット、さらに上空からシャーシの裏まで、あらゆる場所でバトルとチェイスが同時多発し、限界突破の興奮に導いてくれる。
ここでようやく活躍を見せるのが、フュリオサの師匠となる警備隊長のジャックだ。見た目はほぼジェネリックなマックス・ロカタンスキーといったキャラクターで、今作で随一のヒーロー的な戦いぶりを見せる。
やがてパートナーとなったジャックとフュリオサの逃走劇が展開するなか、暴れすぎて自己崩壊しそうなディメンタスとイモータン・ジョーの40日戦争、そしてあらゆる「復讐」の行く末が描かれていく。