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『怒りのデス・ロード』への批判を内包した“真の傑作”。興行収入では計れない映画『マッドマックス:フュリオサ』の価値とは?

text by 山田集佳

世界中で大ヒットを記録した映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚となる、映画『マッドマックス:フュリオサ』が公開中だ。期待されていたような興行成績が残せず、ファンの間でも評価が分かれている本作が「前作と同じくらい大切な作品」である理由とは? (文・山田集佳)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>

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【著者プロフィール:山田集佳】

フリーライター。児童向けゲーム雑誌の編集を経て、現在はおもにゲームと映画についての記事を執筆。ゲームシナリオ等も手掛ける。映画やドラマについての情報を毎週紹介するIGN JapanのYouTube番組『銀幕にポップコーン』にレギュラー出演中。

興行成績では計れない『フュリオサ』の価値

『マッドマックス:フュリオサ』
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 2015年に公開され、世界中の人々を熱狂させた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以下、『怒りのデス・ロード』)。核戦争後の荒廃した世界を舞台にし、ともすればマッチョになりうる設定の中で力強いフェミニズムのメッセージを発する同作に、公開当時、私もすっかり魅了された。しかし同時に、映画館にじわじわと広がるその熱狂に、戸惑いも感じていた。

 そして、「怒りのデス・ロード」の続編であり前日譚『マッドマックス:フュリオサ』(以下、『フュリオサ』)が9年の時を経て公開された。待望の続編でありながら、『フュリオサ』の語り口は前作とも明らかに異なっており、続編を待ち望んでいたファンの間でも評価が分かれる結果となっている。

 しかし前作からの語り口の変化は、9年の月日の間にすでに違和感や戸惑いなしには『怒りのデス・ロード』を観られなくなっていた私にとって、1つの明確な、そして切実な答えのように映った。『フュリオサ』は、『怒りのデス・ロード』で提示されたさまざまな表現を踏まえて、それらをあえてトレースせずに新たな物語を描こうとしている、あるいは物語そのものの在り方を問い直そうとしているように、私には感じられたからだ。

 実際のところ、『フュリオサ』は興行成績では苦戦を見せ、開発中と噂されていた続編の制作も危ぶまれているという。それは、当然の結果だろう。『フュリオサ』の語りは、前作が生み出した熱狂を自覚的に退けている。前作に比して映画としてのスペクタクルやスムースさが足りないという感想は、まったく正しい。しかしそれでも『フュリオサ』は、私にとっては前作と同じくらい、大切な作品になっている。

 そう考える根拠を説明するために、まずは前作『怒りのデス・ロード』について語っていきたい。

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