ジャック・ニコルソンの名演が光るアメリカン・ニューシネマの傑作ー演出の魅力
本作は、抑圧的な精神病院を舞台に、人間の尊厳と社会の不条理を描いた作品。監督は『アマデウス』(1984年)『ラリー・フリント』(1997年)のミロス・フォアマンで、原作はケン・ギージーによるベストセラー小説。
「管理社会からの自由の獲得」という人類の普遍的なテーマを描いた本作は、いわゆるアメリカン・ニューシネマ後期の代表作作品として知られている。
アメリカン・ニューシネマとは、抑圧的な社会に対する反体制的な感情を閉じ込めた作品で、『イージー・ライダー』(1969年)や『明日に向って撃て!』(1969年)などが知られる。
そんな本作の最大の魅力と言えば、なんといっても主演のジャック・ニコルソンの演技が挙げられるだろう。パワフルな彼の演技は、『Total Film』誌の「映画史に残る演技ベスト200」でなんと1位に選出されている。
ちなみに、ジャック・ニコルソンは、本作や『イージー・ライダー』に加え、同じくアメリカン・ニューシネマの佳作『ファイブ・イージー・ピーセス』にも主演しており、ニューシネマの申し子といっても過言ではないだろう。
また、公開当時は、興行収入1億ドルを超える大ヒットを記録。第48回アカデミー賞では、作品賞や監督賞をはじめ主要5部門を独占し、1998年にアメリカン・フィルム・インスティチュートが選出した「アメリカ映画ベスト100」では20位に、2006年に選出した「感動の映画ベスト100」では17位にランクインするなど、映画史上の名作として今なお語り継がれている。
一方、精神病院を舞台にした本作には、一度見たら忘れられない、“トラウマシーン”が随所で描かれる。その最たるものは、映画終盤で、主人公が受けるロボトミー手術のシーンだろう。「精神疾患を治すために脳の一部を切除する」ロボトミー手術は、映画でも描かれているとおり、病人を治癒させるどころか廃人化するリスクが高く、現在では広く忌避されている。
本作におけるロボトミー出術の描写は、映画のみならず、漫画やアニメなどジャンルを横断して後世の表現に影響を与え続けている。