原作では冒頭で掘り下げたルフィの幼少期
実写では随所にちりばめる形に
原作と実写版のルフィの違いを見ていこう。
まず、漫画である原作『ONE PIECE』では、ルフィは悪魔の実を誤って食べ、山賊棟梁のヒグマという小悪党に、海の上へ誘拐される。その後、シャンクスに救われるという、ルフィの幼少期の故郷フーシャ村の回想シーンから物語は始まる。
成長したルフィは、小さな船で旅に出る。途中、大渦に巻き込まれ、樽に入ったルフィは、女海賊「金棒のアルビダ」が率いる海賊船に辿り着く。
これが実写版『ONE PIECE』では、まず小さな船で航海をしているルフィが登場。大渦ではなく、船の沈没によって自ら樽に入り、その後、女海賊「金棒のアルビダ」率いる海賊船に辿り着く。
これは前述したように、なるべくCGI技術を使用せず、現実の世界に近づけるための工夫が見られる場面でもある。実写版『ONE PIECE』では極力不自然な場面を減らすため、最初のシーンから、大渦ではなく沈没に変える工夫を行ったというワケだ。
また、生まれ故郷の回想シーンも、最初に全て紹介するのではなく、所々に挿入することで、ドラマとして物語を短くまとめてドラマに合わせたテンポに変えた上で、より多くの原作シーンを詰め込みながらも、しっかりとルフィのバックボーンを伝えている。
ファーストシーズンのラスボスは、魚人海賊団アーロン一味の船長アーロンだ。原作でのルフィはアーロンと、まずアーロンパーク内で戦闘を繰り広げる。その過程で大きな城の最上階にある測量室に辿り着く。そこは、かつてアーロンがナミに無理矢理海図を描かせていた場所だ。
しかし実写版では、ルフィとアーロンの戦いは測量室で始まり、部屋を破壊。ゴムゴムの戦斧(おの)でアーロンを城ごと叩き落とす形で倒すという展開へと変更されている。このシーンも、アーロンとの長い戦いを重要なポイントを残しつつ、限られた尺のドラマに上手く落とし込む、見事な要約であると感じた。
とにかく、実写版『ONE PIECE』のクオリティは非常に高い。そのため短くまとめずに、じっくりと、全てのシーンをとことん再現したルフィ一味VSアーロン一味を見たい…! と思ったのは筆者だけではないはずだ。