なぜ『オッペンハイマー』はアメリカで国民的ヒット映画となったのか?
また本作は賞レース受けしながら、興行的にも大ヒットした稀有な映画でもある。理由は、アメリカ人が大好きなジャンル「実在人物の伝記映画」であること、近年ニーズが高まってきたアメリカの黒歴史に言及した作品であること、そして何よりも信じられないくらいの数のスター俳優が集結したオールスター映画だからだろう。
出演を熱望する俳優が多いため、もともとノーラン作品はスター映画になりがちなのだが、それにしても本作は度を越している。なにしろ名のある役を演じる俳優のほぼすべてが主演を経験済みなのだ。
もっともこれだけ大人数の登場人物を観客に判別してもらうには、こうしたキャスティングが不可欠だったはず。前述のロバート・ダウニー・Jr.やエミリー・ブラント、マット・デイモン、フローレンス・ピューといった現在進行形のスターに混じって、一時期プッシュされていたけど今はそうでもなくなってしまったジョシュ・ハートネット(そういえば前述の『パール・ハーバー』で主人公のひとりを演じていた)やデイン・デハーンが気を吐いているところも俳優好きにはタマらないだろう。