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恋愛と仕事(キャリア)の間ですれ違う二人

パスト ライブス/再会
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観る人によって好きなシーンはそれぞれ違ってくるが、個人的には、この24歳時代の二人がとても好きだ。好きでもあり、苦しくもなるシーンがたくさんあった。なぜなら私自身が、ソウルとニューヨークほど離れていなくても、気軽に会いには行けない距離に住んでいる人を好きになってしまったことがあるからだ。「次いつ会えるかもわからない」、「付き合えるかわからないし、そもそも付き合っても遠距離でうまくいくかわからない」、「それでも好きだから繋がっていたい」。

きっと二人は、そんな思いでSkypeを続けていたのではないだろうか。時差があるから、ノラは早起きしながら、ヘソンは授業に遅刻しそうになりながら、どんどん関係を深めていく。しかしある日、ノラはヘソンに「もう話すのはやめよう」と、一方的に繋がりを断とうとする。ヘソンからしてみれば「なんで突然!? 俺たち同じ気持ちなのに」とわけがわからなかっただろうが、この時のノラの気持ちが、私には痛いほどわかってしまった。

仕事をもっと頑張りたいのに、今が大事な時期で恋愛に夢中になっている場合なんかじゃないのに、ヘソンに会いたくて仕方がない…。ヘソンのことが大好きだからこそ、自分の気持ちに蓋をして、今やるべきことを優先する。恋愛だけが全てじゃない、自分自身のキャリアも大事だと考える女性(そして男性も)は、このシーンにとても共感できると思う。また、ノラがヘソンに「いつニューヨークに来るの?」と聞くシーンがあるが、この気持ちも、よくわかる。

これは勝手な女心なのだが、「本当に私のことが好きならなんで会いに来てくれないの!?」という気持ちがあったのではないだろうか。多分、自分に対する“本気度”を見せてほしかったのだと思う。ああ、ノラの気持ちがわかりすぎてつらい…(笑)。

きっと、「恋愛こそ全て」のような男女を描いたキラキラした恋愛映画なら、この時点でどちらかが絶対に会いに来てハッピーエンドを迎えるだろう。だがこの映画は、ノラもヘソンも、航空券を買うことはない。なんてリアルなのだろうか…。と思ったら、この作品はセリーヌ・ソン監督の半自伝的作品なのだそうだ。お互いに想い合っていたとしても、現実ではきっとこんなふうに、何かがきっかけであっさりと関係が終わってしまうことがある。

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