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鮮血が広がる一面の雪景色〜映像の魅力

映画『ファーゴ』の象徴的な1シーン。フランシス・マクドーマンド
映画ファーゴの象徴的な1シーンフランシスマクドーマンドGetty Images

本作の映像で印象的なのは、空と地面が渾然一体となった一面の雪景色だろう。オープニングでは、真っ白なタイトルバックから新車を牽引するジェニーの車が浮かび上がる。このシーンは、事件の不吉な予兆に満ちたこの上ない導入だろう。

また、終盤、ゲアがカールの死体をウッドチッパーで解体するシーンでは、ウッドチッパーから排出された肉片や鮮血が雪原を真っ赤に染めていく。雪は、事件の闇を覆い隠すヴェールであるとともに、生々しい現実を浮かび上がらせるキャンバスでもあるのだ。

なお、本作の撮影が行われた年のミネソタ州は記録的な暖冬で、降雪量が極端に少なかったため、撮影はノースダコタ州で敢行。雪は自然のものではなく、製造機で作られたという。

本作の撮影監督ロジャー・ディーキンスは、『未来は今』(1994年)以降コーエン兄弟を支え続ける名カメラマン。『ブレードランナー2049』(2017年)と『1917 命をかけた伝令』(2019年)でアカデミー賞を受賞している。

ディーキンスは本作で、窓から射し込む外光を利用するなど自然光を柔軟に取り入れ、ミネソタ州の風土を見事に表現。また、ロングショットやワイドショットを多用し、出来事にフォーカスしたシンプルな絵作りを行っている。

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