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“ホンモノ志向”が生み出した科学的な映像美―映像の魅力

監督のクリストファー・ノーラン
監督のクリストファーノーランGetty Images

撮影では、CGをできるだけ使わず、昔ながらのフィルム撮影を重視することで知られるノーラン。彼の比類なきこだわりは、本作の端々にも観られる。

まず、カメラは、他のノーラン作品同様IMAXカメラを、フィルムは65mm15パーフォレーションのIMAXフィルムを使用。クーパーたちが乗るスペースシャトル型の宇宙船レインジャーはほぼ実物大の7/8スケールのセットが建築され、リング状の宇宙船円デュラスは、昔ながらのミニチュアで撮影されたという(美術はアメリカのニュー・ディール・スタジオが担当)。

宇宙船の背景は、フロント・プロジェクションで星空やブラックホールをスクリーンに投影。さらに、ブラックホール内の「5次元超立方体テサラクト」のシーンでは、事前にプロダクションデザイナーのネイサン・クロウリーがソニー・ピクチャーズ・スタジオ内に20~30mもの巨大セットを建築。撮影は、マコノヒ―をセット内でワイヤーで吊るして行われ、映像はその後デジタル処理されたという。

また、オープニングのトウモロコシ畑のシーンでは、カナダのカルガリー近郊に500エーカーもの広大な土地で事前にトウモロコシを栽培。畑が燃えるシーンでは、植物監修のスタッフが「緑の葉は燃えない」とノーランに伝えたところ、「私の映画では燃える」とにべもなく返され、撮影では、大量のプロパンガスで火を、軽油で煙を起こしたという。

そして、圧巻は、劇中のブラックホールの描写だ。このシーンでは、ブラックホールを正確に描写するために、なんとアインシュタインによるブラックホールの方程式を、4万行ものプログラミング言語(C⁺⁺)に落とし込んでいる。さらに、映像化に当たっては、3万2000コアのCG用コンピュータクラスタ上で1フレームあたり20時間かけてレンダリングしているという。

なお、本作は、第87回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞している。本作の映像美は、科学的な忠実性を求めるノーランたちスタッフの比類なき努力と情熱の賜物だと言えるだろう。

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