サン・セバスチャンを見事に再現した美術
そうした一連の報道後はじめて製作されたのが、アレンが監督・脚本をつとめたこの『サン・セバスチャンへ、ようこそ』だ。本作は、スペイン北部のバスク地方で開催されているサン・セバスチャン国際映画祭で、2020年にプレミア上映された。
そしてなんと、この映画はそのサン・セバスチャンを舞台にしたロマンティック・コメディになっている。映画では、実際に国際映画祭の会場として使われている劇場や会議場のほか、観光スポットとして有名なラ・コンチャ海岸やホテル・マリア・クリスティーナがロケ地として選ばれた。プロダクション・ノートによれば、美術や衣装を含め、できる限り映画祭をリアルに再現しようとしたそうだ。
このサン・セバスチャンの豊かな風景を、暖かな色彩で捉えた映像は特筆すべきだ。鮮やかな陽光に彩られた街並みや自然は美しいの一言。撮影監督は、数々の名作に加え、『カフェ・ソサエティ』(2016)以降のアレン作品も手がけきたヴィットリオ・ストラーロで、今作で4度目のタッグとなる。