『シュリ』が日本にもたらした衝撃と恐怖と熱狂
『シュリ』は南北関係をベースにしたスパイアクション映画だ。北朝鮮の女スパイと、韓国の男性情報部員の恋愛が描かれているため、当時は悲恋にフォーカスされて宣伝されていたような気がする。
だが、恋愛絡みのスパイアクションを期待して劇場に行くと度肝を抜かされること請け合いだろう。冒頭5分間は、北朝鮮の特殊部隊が受ける訓練の様子が描かれている。頸動脈をナイフで切る、丸太に括り付けられた人間を躊躇なく滅多刺しにする、連れてこられた人々を容赦なく攻撃し断首するなど…。
全身に血を浴びても表情ひとつ変えることなく、訓練の名の下に大量殺人を繰り返す人々の姿が映し出されるのだ。
描かれるのは、訓練兵の攻撃力の高さだけではない。彼らが、死をも恐れない「非情なマシン」であることも描かれる。南北関係が恋人たちを悩ますスパイアクション、という説明に間違いはない。しかし、想像の斜め上を行く展開に、ハリウッド映画に慣れていた日本は驚き、恐怖し、熱狂した。