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『シュリ』を起点に変化していった北朝鮮のイメージ

シュリ
©Samsung Entertainment

 公開当時はインターネットも発達しておらず、今ほど海外の動向を手軽に得られなかったため、韓国のエンターテインメントについて知っている人はほとんどいなかったはずだ。

 そんな中、物珍しさと評判の良さにつられて劇場に足を運んだ人たちは、内容の激しさや深さ、北朝鮮という国の悲惨さに頭を殴られたような衝撃を受けた。

 だが、韓国映画で描かれる北朝鮮像は画一的ではない。いや、かつては画一的だったが、『シュリ』を起点に変化していった。

 例えば、北緯38度線の共同警備区域における両国兵士の交流をテーマにした『JSA』(2000)では、北朝鮮の兵士は、韓国兵士とも交流を深める一方で祖国への忠誠心を捨てきれない人情味あふれる人物として描かれている。

 最近だと、韓国の財閥令嬢が北朝鮮に不時着したことから始まるラブストーリー『愛の不時着』が記憶に新しいだろう。この作品で描かれる朝鮮人民軍の軍人は、真面目で情に熱い、愛すべき人物だ。

 長びく休戦の中で、南北の関係や、それを捉える人々の感覚は変わりつつある。その感覚は、コンテンツの中で描かれる北朝鮮のイメージにも反映されるため、歴史の流れを知る上でも非常に興味深い。

 冒頭でも触れたが、『シュリ』の劇場上映は25 年ぶりであり、その裏にはファンからの強い要望と監督の努力があった。この記事を書くにあたり、改めて試写鑑賞したが、古さを感じさせない物語と変わらない衝撃があった。

 『シュリ デジタルリマスター』は、9月13日(金)より、シネマート新宿他全国でロードショーされる。本作を見ずに韓国コンテンツは語れない。この機会にぜひ劇場で堪能してほしい。

(文・中川真知子)

【作品概要】

監督・脚本:カン・ジェギュ
出演:ハン・ソッキュ『八月のクリスマス』、キム・ユンジン『告白、あるいは完璧な弁護』、チェ・ミンシク、『オールド・ボーイ』、ソン・ガンホ『パラサイト 半地下の家族』
主題歌:When I Dream(キャロル・キッド)
1999年/韓国/カラー/125分/ドルビー・デジタル/PG12/字幕翻訳:根本 理恵
配給:ギャガ
©Samsung Entertainment
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