家族視点から見た宇宙戦争ー演出の魅力
本作は、『シックス・センス』(1999年)で知られるM・ナイト・シャマランによるSFホラー作品。主人公グラハム・ヘスをメル・ギブソンが、メリル・ヘスをホアキン・フェニックスが演じている。
「宇宙人による侵略」というテーマを扱った本作。しかし、物語はあくまでグラハム一家の視点から描かれており、UFOや逃げ惑う群衆といった古典的なモチーフも登場せず、宇宙人に関する情報もテレビから流れるニュースにとどまっている。
派手なスペクタクルを極力排し、思わせぶりな描写を積み重ねることで観客を引き込むタイプの映画であるため、観る人によっては「こけおどし」「つまらない」といった印象を持つかもしれない。一方、死や暴力を描かずに”世界の終わり(の予感)”を描くことに成功しているという点で、シャマランの確かな演出力が感じられるのも確かだ。
シャマラン自身、制作時はアルフレッド・ヒッチコックの『鳥』(1963年)やジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)といった名作を参考にしたと語っており、「目には見えない存在」が徐々に一家を侵食する描写は、他のパニック映画にも全く引けをとらないものに仕上がっている。
なお、本作のクランクインは、アメリカ同時多発テロの2日後で、しかも最初のシーンはグラハムと妻の死別のシーンだったという。タイトル通り「サイン(前兆)」をテーマとした作品だけに、製作陣は運命的なものを感じたに違いない。