日常の倦怠感の中に漂う死の匂い〜演出の魅力
本作は、ガス・ヴァン・サント監督の代表作で、『GERRY ジェリー』や『ラストデイズ』とともに“Death Trinity(死の三部作)”といわれる作品。2003年のカンヌ映画祭では史上初となる最高賞パルムドールと監督賞のW受賞を達成し、大きな注目を集めた。
社会との違和感に苦しむアウトサイダーの姿を美しい映像で描いてきたサント。本作で彼がテーマとするのは、1999年4月20日に米コロラド州で発生したコロンバイン高校銃乱射事件である。
24名が負傷し、15名が命を落としたこの惨劇は、マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』をはじめ、さまざまな社会派映画の題材になっている。しかし、本作で事件が起こるのはあくまで後半。それまでは、被害者と加害者の視点から、淡々と彼らの日常風景を追っている。
アメフトの練習を終えて彼女と待ち合わせるネイサン、公園を散歩するカップルを撮影する写真部員のイーライ。どこにでもあるティーンの日常風景が繰り広げられる。しかし、観客である私たちは、この日常が、時を待たずして一変することを知っている。惨劇はいつ起こるのか、そして、登場人物のうち誰が死ぬのかー。そう考えながら見ると、画面が異様な緊張感を帯びてくる。
死の匂いは日常の中にこそ充満しているー。そんな事実を思わせてくれる作品である。