現役の高校生が演じるフラットな日常〜演技の魅力
本作に登場する役者は、なんと、大人の役者3人をのぞきオーディションで選ばれた高校生。しかも、彼らの役名は全て本名と同じである。
サントは、演技指導にあたり、ストーリーの概要と重要な台詞だけを出演者に渡し、あとは自由に演技させたという。そのため、セリフは全て現場で、役者である彼らの手で自ら作り上げられている。そのせいか、本作では、ティーンである彼らが学校で話しているような内容のセリフが語られる。登場人物が感情を露わにしてるわけでもなければ、極端に静かなわけでもない。そんなフラットな日常が、見事に演出されている。
近年、「リエナクトメント」とよばれる活動が注目を集めている。日本語に訳すと、「再演」だろうか。大勢のエキストラを使って、歴史的な出来事を再現する活動のことである。これを念頭に置くと、本作はコロンバイン銃乱射事件をテーマとした「リエナクトメント」の記録映像ともいえるのかもしれない。
実際に、銃乱射事件の当日もこんな会話が繰り広げられていたのではないか? そして、今役者として映っている彼らが、事件の犠牲者だった可能性もあるのではないか?ーそんな数々の”歴史のif”に思いを巡らせずにはいられない。