効果的に使われたベートーヴェンの楽曲〜音楽の魅力
本作の音響デザインは、『GERRY ジェリー』や『ラストデイズ』と同じく、レスリー・シャッツが担当。しかし、オリジナル曲は一切使われておらず、挿入曲として、ベートーヴェン作曲の『ピアノソナタ第14番(月光)』『エリーゼのために』が効果的に使われている。
『月光』が使われているシーンでは、ネイサンたちがグラウンドでフットボールに興じている。途中、ミシェルがカメラの前で立ち止まり、じっと空を見上げる。おそらく彼女の目には、オープニングとエンディングで映る、あの陰鬱な雲の垂れ込めた空が映っているのだろう。
『エリーゼのために』は、学校を早退したアレックスが自宅のピアノで演奏するシーンと、2回目はエンディング、空の映像に合わせて流れる。ちなみに、『エリーゼのために』は、撮影中にアレックス本人がアドリブで弾いたのをきっかけに採用されたという。
なお、ベートーヴェンの『月光』に関しては、こんな逸話がヨーロッパでまことしやかに信じられた。ある日、ベートーヴェンが月明りの中散歩をしていると、ある家からピアノの音が聞こえてきた。近づいて見ると、家の中で盲目の少女がピアノを弾いていた。驚いたベートーヴェンはその家で即興演奏をした。その楽想をもとに『月光』が作られたー。
この話はのちに嘘であることが判明しているが、もしかしたらサントは、この逸話を思い出して本曲を採用したのかもしれない。
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