時代劇を“オーセンティック”に作ることの難しさ
「真田はオーセンティックな時代劇を目指した」と簡単に一言で片付けられるほど、伝統的な時代劇を作ることは決して容易ではない。
日本人の映像クリエイターなら誰もが作れるというものではなく、専門的な知識と技術が必要になる。たとえば鬘、衣裳、セット、小道具、所作など。『SHOGUN 将軍』は、日本の時代劇の職人たちが海を渡り、現場で技術提供している。
これは真田が5歳から積み上げたキャリア——1966年に出演したテレビドラマ『水戸黄門』(TBS系)などからはじまり、数々の時代劇の現場を耐え抜いてきた経験——があって実現できたことだ。
耐え抜く——。そう表現したくなるほど時代劇の現場は厳しかった。今のようなコンプライアンスに厳しい時代とは違い、戦中を生き延びた男たちの怒号が飛び交う世界から始まっている。入り口となる殺陣の稽古では、たった数日で手足の皮が剥けて、日常生活が送れなくなるという経験を多くの役者が語る。
時代劇のスキルは、一朝一夕では得られない。なお、ここでいう日本の時代劇の職人とは、京都・太秦の東映などの撮影所で働いてきた職人たちのことである。NHKの大河ドラマなどの現場ではまた文化が異なる。