世界に発信することが文化継承の活路に
もはや武士道を説明できる日本人はほとんどいないだろうが、これを世界中の人々が理解できるように作るということは、現代の日本人にも理解がしやすいということだ。つまり時代劇に馴染みのない日本の若い世代にとっても入り口になり得る。
『SHOGUN 将軍』で真田が目指したのは、「日本の“時代劇通”が観ても納得できる作品にする」ことだった。日本の文化を正しく世界に伝え、現代の日本人の時代劇作品への入り口にもなる。まさしく文化の継承ができるのだ。
レギュラー放送のテレビ時代劇が激減したいまの日本では、時代劇文化の延命の可能性は低いと言わざるを得ない。かつてはよく使われた馴染みのロケ地も、荒廃が目立つ。
海外で時代劇の制作に取り組んだ真田は、単に面白いドラマを作ったのではない。文化というものを大切に扱う傾向のあるフィールドで、『SHOGUN 将軍』を通して表現した日本文化と、「時代劇」そのものという技術と文化の継承の活路を開いたのだ。
間違ってはならないのが、真田は海外に日本文化を明け渡したわけではない。ほとんど存在しなかった道を切り開き、このあとに続く日本人を求めているのだ。
そしてアジア人や日本人が見下されることなく、相互理解とリスペクトを得られる土台を作ったのである。世界でリスペクトを得られるということは、文化が守られることに繋がるだろう。