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山崎努の鬼気迫る演技ー配役の魅力

戸倉警部役の仲代達矢【Getty Images】
戸倉警部役の仲代達矢Getty Images

本作の演技のMVPは、竹内役の山崎努だろう。当時はまだ駆け出しの若手俳優だった山崎だが、犯罪者の抑圧された狂気を見事に表現している。なお、ラストで面会室の金網をつかんで泣き叫ぶシーンは、山崎のアドリブで、照明で高温になっている金網を鷲掴みにする山崎に黒澤も思わず慄いたという。

また、主役の権藤金吾役の三船敏郎も外せない。黒澤作品の常連として知られる三船だが、権藤役は三船以外に誰も演じられないのではないかと思うほどに見事にハマっている。特にラスト、職を失った権藤が叫ぶ「俺はまだ、これからはいよいよ俺なんだ」というセリフは、三船以外には許されないセリフだろう。

そして、警察側では、戸倉警部役の仲代達矢をあげなければならない。本作の役作りにあたり、往年の名優ヘンリー・フォンダを意識したという仲代。「情」で訴えかける三船と見事な対を成しており、物語をがっちりと下支えしてくれている。

なお、意外なところでは、ボースン役の石山健二郎がいい味を出している。頼れるベテラン刑事のボースンだが、本作ではどちらかというとコメディリリーフ的な立ち回りが多く、緊迫感あふれる本作の清涼剤となっている。

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