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「人間ジョン・レノン」を
目の当たりにできる貴重な作品

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ジョンのファンにとっては公然の秘密として語り継がれている「失われた週末」だが、実のところ、全てはヨーコの思惑通りに物事が進められていたのではなかったかという疑念が湧き上がる。

この18か月のお陰で、ジョンとヨーコの共作アルバム『ダブル・ファンタジー』を発表するのだが、その直後の1980年12月8日、ジョンが自宅のダコタハウス前で、マーク・チャップマンの凶弾により40歳の若さで亡くなる。ヨーコも撃たれそうになったが、すんでのところで難を逃れた。

ジョンが天に召されたことで、ジョンとヨーコは「おしどり夫婦」としてのイメージが固定化されることになる。しかしその3年後、メイがそのイメージに冷や水を掛けるかのように、回想録『Loving John』(後に本作と同じ『John Lennon:The Lost Weekend』に改題)を出版し、ジョンとの不倫関係を明らかにする。

ジョンとヨーコの秘書を辞してからは、音楽界から離れ、ジュエリービジネスで成功を収めていたメイ。こうした“暴露本”を出してあぶく銭を手にするメリットはない。逆に、ジョンのファンから狙われ、身の危険に晒されるデメリットの方が多いくらいだ。

『失われた週末』と題した本作の原作を著す動機となったと考えられるとすれば、その期間が彼女の目から見て、ジョンが最も充実していた時期であるという自負があったからではないだろうか。ヨーコも、それを見越してロス行きを黙認していたとすれば、先見性に優れた名プロデューサーということもできる。

ヨーコは昨年、90歳になったのを機に、ジョンと共に過ごし、50年間も住んだニューヨークのダコタハウスを離れ、1978年に購入したニューヨーク州フランクリン近郊の農場に移住。健康に不安を抱え、24時間介護態勢のもとで車椅子生活をしている。 しかしながら、“女は灰になるまで”との例えもあるように、ヨーコにも女性の意地があるはずであり、本作を目にしたとしたら、いい気分ではいられないはずだ。

それでも出版に至ったのは、長年、都市伝説的にファンの間で語り継がれてきた謎の18か月について、存命のうちに明らかにしておこうというメイの思いがあったからではないか。そして、映画化された本作は、そのファンの疑問に完全に応える形となっている。

ジョンとヨーコ、そしてメイも交えたドロドロとした関係性に、ジョンの一部ファンからは「こんな素顔は見たくなかった」という反応も予想される本作。しかし、ジョンのだらしない一面も垣間見え、「人間ジョン・レノン」を目の当たりにできる貴重な作品だ。

(文・寺島武志)

【作品概要】

原題:The Lost Weekend:A Love Story
監督:イヴ・ブラントシュタイン、リチャード・カウフマン、スチュアート・サミュエルズ
出演:メイ・パン、ジョン・レノン、ジュリアン・レノン、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン
配給:ミモザフィルムズ
字幕:松浦美奈
字幕監修:藤本国彦
2022年/アメリカ/英語/94分/カラー/G/1.85:1/5.1ch
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