原作とは異なる角度から描かれるミナと母の関係
対して映画には、まずミナの父は不在である。そして母の死の直接の原因は、ミナにあったとされる。家族でドライブ中の車内でミナは、ルールを破って窓ガラスから身を乗り出したことで、母に叱られる。そして、母の言葉をオウムのように繰り返し、言うことを聞かなかったミナの方に振り向いたせいで、母は前方から来る車に気がつかず、悲劇が起きる。
母の言いつけを守っていた姉はその後家庭を持ち母になった。一方、ルールを守れなかったミナは、酒とタバコに頼る孤独な女性となった。映画では、姉を双子に設定することで、鏡のイメージを響かせつつ二人の対照性がより際立たせられる。時は流れ、ガラスの前に佇むミナに向かって、今度はマデリンが再びルールを伝える。
さすがに力業が過ぎるようにも思える。『ヴィジット』(2015)を思い出してしまう部分もある。しかしイシャナは、ガラスという装置とも関連づけて模倣のテーマを強調することで、マデリンを表す比喩として継母という単語を直接的に使用する原作とは異なる角度から、ミナと母の関係をミナとマデリンのそれと重ね合わせようとしたと言えよう。
(文・冨塚亮平)