スパイダーマンにあってフラッシュにないもの
そうなると、そもそも「フラッシュ」というヒーローに日本の映画ファンの食指が動かなかったのかもしれない。
日本では「スパイダーマン」はアメコミ・ヒーローのなかでも人気の高いキャラクターだが、今回の『ザ・フラッシュ』は、そのスパイダーマンと重なる部分が多い。
主人公は、内向的でオタク気質の強い「ナード」な青年。ひょんなことから特殊能力を身につける。普段はバレないように生活していて、人助けを続け、ヒーロー軍団のなかではサポート役。
想い続ける恋人がいる。家族を失った喪失感を抱えている…。赤を基調としたコスチュームもスパイダーマン感があるのに、同等の人気が得られていない。
さらに『ザ・フラッシュ』の重要な要素に「マルチバース」がある。これは『アクロス・ザ・スパイダーバース』にも、大ヒットしたマーベル作品『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも基調となる設定だが、そこで生まれるドラマ性もサプライズも負けていない。
『ザ・フラッシュ』は、さらにタイムトラベルの要素が加わるので、もう1段階複雑になるのだが、それは映画を観てからのこと。
そもそも劇場に観客を集められてないというのは、マルチバースの設定以前に、DC映画が紡いできた紆余曲折の歴史の複雑さが敬遠されていると思われる。